雑記

会社で一人のときは、昼飯に清洲橋通りのラーメン屋に行く。
看板のラーメンという字が消えかかっている。多分ラーメン屋だ。
店に入ると「チャス」と店主が声を出す。いつ行っても他に客はいない。水は自分で入れる。
僕が来たことで店主は動き出す。静かな店内で冷蔵庫を開ける音や調理する音だけが響く。静かな日曜日の朝みたいだ。
ラーメンは魚介の匂いがしてちょっと塩っ気がある感じ。拘ってるのか素朴なんだか判らない。
僕が食べている間、店主は座って文庫本を読んでいる。僕が来る前もそうしてたんだろう。


何人かと一緒に行ってみたが、誰一人評価する人はいなかった。
でも僕は割と好きで、2週間に1回くらい様子見に行っている。
それを会社の人に話すと、「またあの店行ったの?」と馬鹿にされる。
まあいいじゃないか。光が差し込む店内と静かな店主とラーメンが好きなのだ。
他に客がいないからそわそわするけど。

雑記

うちの母親の実家は、八百屋がメインの小さなスーパーをやっていた。
幼稚園はそこから通っていて、僕はおやつに毎日グレープフルーツを食べていた。
店内には、スペースインベーダーのゲーム機があったりもした。
僕が4歳か5歳くらいの頃、じいさんが店に自動ドアを導入した。
自動ドアをくぐると、「ピンポーン」と音がなる。
僕は何度もくぐってテストをした。ちゃんと毎回鳴った。
「ピンポーン」って鳴ったからおばあちゃんが店に出ると、僕だったりするので怒られた。


夜になるとお客さんは来なくなる。
そんなとき、おばあちゃんはいつも「どうしちゃったんかねえ」と僕に言った。
「どうしちゃったんかねえ」のせいか、お客さんがいないのがトラウマになった。
今でもどこかお店に行って他にお客さんいないと、ちょっとそわそわする。
どうしちゃったんかねえと思う。

雑記

思ってもみなかったよ きみがないなんて

たくさん探したけど見つからなくて ベランダだってトイレだって

なくなってわかったけど しっくりこないんだ

ぼくの心とシンクして ブラついちゃって

大切だって知ってたのに 放っておいたぼくの罪

あせってもムダだってわかってる すぐには乾かないよ

7年前きみはぼくの前にやってきた それからずっとフィットしてた

今週末だってフィットするはずだったのに

ひとりでシャワーを浴びた ぼくはそのままの姿だよ

パンツ ボクサーパンツ ぼくのボクサーパンツ

心といっしょに洗うから ぼくのボクサーパンツ

きっとすぐ乾くから

そろそろかと思っていたけど、びっくりしたぞ。
今日の俺は油断しきって劇的ビフォーアフターとか見てた。
聞いたときはおろおろしたんだが、うれしかった。
とうとうやって来たんだな。こんな日が。

雑記

34歳になった僕は、TVで歌ってるAKB48をぼうっと見ている。
フライングゲットってどういう意味なんだろう。


夜21時頃のオフィス。中堅社員と後輩社員が残業している。
「先輩腹減りませんか?」
「え?あー、減ったかも。コンビニ行ったりする?」
「俺行ってきますよ。何かご希望ありますか」
「適当に頼むわ。軽めなの」
後輩社員は財布を持ってコンビニに出掛けていく。


「お待たせしましたー。」
「おー、サンキューサンキスト。お前何買ってきたの?」
「俺は塩ダレ豚カルビ弁当っすね。先輩にはこれっす」
後輩社員は先輩に紙に包まれたホットスナックのようなものを渡す。
「何この三角の」
「これっすか?フラゲっすよ」
フラゲ?何それ」
「先輩フラゲ知らないんすか?うちの妹とか好きで毎晩食べてますよ。まじフラゲ中毒っていうか」
「へー、妹さん好きなんだ。で何なのこれ。知らないから開けるのこわいんだけど」
「何ていうか、メンチカツより軽くて、コロッケより歯ごたえあるっていうか、多分イカのゲソとか入ってるんじゃないかなあ」
「え、何、全然わかんないんだけど、コロッケなの?あったかいけど」
「あー、コロッケっていうか餃子っていうか、そういやこれ揚げてあるのかわかんないっすね」
「え、揚げてないの?フラゲのフラってフライのフラじゃねえの?焼き物?」
「いやー、焼き物って感じでもないっすねー。蒸してる?」
「蒸してんの?でも紙の隙間からコロッケの衣みたいなの見えてるよ?」
「あー、衣は付いてますねー。でも蒸してから揚げた衣付けてんじゃないかなー」
「いや、そんな料理絶対ねえだろ。何これどんな味なの?さっぱり系?こってり系?」
「あー、飽きない味っすね」
「飽きないって何よ?大体フライだろ?フラってフライ以外あるか?フランベ?コンビニでフランベ?しかもこれ何か異常に重さあるよ、何これ?」
「あー、メンチとかコロッケとかは店員が揚げてるんすけど、フラゲだけは店員が作ってないみたいなんすよねー。妹も見たことないって言ってたし」
「俺が言ったことに何にも答えてねえし。だからさこれ異常に重いよ、何なのこれ?しかもフラゲのゲってイカゲソのゲだろう、フライのゲソだろう?そうだろうよ?」
「これは飯以上スナック未満ってとこすかね」
「スナック未満なの?都こんぶみたいなの?どこの位置付けなのよこれ?軽いの?重いよ?重いよ?」
「あー、飲んだ後とかでもいけますよ。おいしいだお」
先輩は立ち上がって後ろを向いて、窓にフラゲを投げる。窓にフラゲがくっ付く。
「あーあー、フラゲくっ付いちゃいました」


34歳でおニャン子クラブをぼうっと見てた人は、還暦間近なんだな。

雑記

お盆休み、群馬の実家に帰るのに輪行してみることにした。
輪行と行っても電車で実家の最寄りの駅まで行って、
そこからたった12キロくらいの道のりを自転車に乗るだけなのだが。
東京の家を出て駅の前で自転車を畳むところから始まった。猛暑なのでその作業だけで汗だくになる。
赤羽まで行って高崎線の鈍行に乗った。
自転車と一緒に電車に乗っていると、降りてからのことを考えてわくわくしてくる。
市内に入ったらどこを寄り道しようかと考える。
本庄で降りて自転車を組み立て、乗り始めた。今まで車に乗りながら見た風景も、
自転車に乗りながら見ると違うもんだ。
実家のある市内を自転車で走ったなんて20何年ぶりだった。
寂れてしまった昔のメインストリートを通っていると、ここで祭りやってたなあとか思い出す。
ここ10何年で市内の風景はずいぶん変わった。道も変わった。自転車に乗りながら見てると細かくわかる。
実家に着いたときは汗でずぶ濡れだった。