酒屋のおじさん

群馬に住んでた頃に世話になった酒屋のおじさんが亡くなったと聞いた。
うちはその酒屋さんから瓶ビールをケースで買ったり、お米を買ったりしていた。
車を停める駐車場もその酒屋さんのところで、色々付き合いがあった。
酒屋のおじさんは大正12年生まれ。僕が子供の頃はよく配達に来てくれていた。
寺内貫太郎一家小林亜星みたいな風貌で、会うとしゃがれた声で
「ぼくー、どうした」とか声を掛けてくれた。
根っからの商人で、お店に行くといつもそろばんを弾いていた。確か計算機は使っていなかった。
80年代当時からしてもかなり古い日産車にずっと乗っていて、渋かった。
仕事もずっと現役で、3年くらい前にお店に行った時も普通に働いていた。
おじさんの奥さんであるおばさんが、たくさんお菓子をくれたのを憶えている。


おじさんはついこの前まで働いていて、急に腸閉塞で亡くなってしまったらしい。
100歳になるまで働き続けるのではないかと思ってたのに。
おじさんは天国に行ってもずっと働いてるんだろうな。


住んでた街は昔に比べて寂れてしまった。そして街の風景だった人もいなくなってしまう。
あの頃新しかった建物も、今は古い建物だ。いつの間にか長い時間が経ったんだな。