雑記

外で雷が鳴っている。


ゴロゴロゴロ、ゴゴーン
「きゃあ」
「あら、こりゃ割と近くに落ちたな」
「何、他人事みたいに言ってるのよ。ここに落ちたらどうするのよ」
「大丈夫。そのときは僕が避雷針になるから」
「はあ?」
「だから僕が避雷針になるから」
「あなたが地面に電気を逃がすって言うの?」
「そうそう」
「よく解からない男らしさね。じゃあ避雷針になるときはどんなポーズするのよ」
エッフェル塔みたいなポーズになると思う」
「早速やってみてよ」
頭の上で左手と右手を合わせ、足を開いて立ってみる。
「ここは屋根の下だから、ベランダに出て」
「え、ああ」
ベランダに出ると、横なぐりの雨でTシャツがびしょ濡れになる。
ゴロゴロ、ゴーン
「うわわ」
「何で避けるのよ」
「いや、やっぱ屋外だと凄くて」
「腕をもっと前に出しなさいよ」
「このぐらいで大丈夫だと…」
ゴゴゴーン、ゴロゴロ
「ひいっ」
「何で避けるのよ」
「いや、このマンション避雷針付いてるし…」
「夏は始まったばかりよ」
ガラガラガラ、ガシッ。サッシ戸が閉められる。
「ちょ、ちょっと」


ベランダの前の道を、傘をさしたおじさんが歩いてくる。
「兄さん風邪ひくぞ、新型」
「あ、あ、はい、なるべく気を付けます」



そういえば母親から、「マスクなら2週間分ある」とメールが来た。
いつの間にか臨戦態勢を整えているらしい。