帰省2日目

父方のおばあちゃんは畳屋のおばちゃんのお葬式に向かった。その後、母方のおばあちゃん家に行った。
猫の小倉は専用のバックに詰められ、車の中でなんともつかない悲しい声を出している。バックから出したら出したで外を見てパニックになっている。
じいちゃんは甚平を着て現れた。今年のじいちゃんの流行りなのだろうか。早速母親の持ってきた包丁を研ぎに行った。
母方のおばあちゃんは相変わらず近所の話が大好きだ。「向こうの道沿いに住んでいる家のおばあさんの娘が、あんたと高校が同じらしいよ」と母親に話すが、母親はよく知らんという顔をしていた。
妹が行きたいと言い出したので、近くのカラオケ屋に行った。23年前にケンタッキーができて大騒ぎになった街には、今ではシダックスくらい当たり前にある。
カラオケ歴15年になるが、家族と行くのは初めてだ。しかも妹とサシ。何とも言えぬ緊張が自分の中に走る。
妹は着くなり絢香I believeを入れて歌い出した。身内の歌声とかまじでなんだろう、なんか照れる。しかも意外とうまい。
「あんたも入れなよ。カラオケよく行くんでしょ」と言われ、僕は頭を抱えた。そうしているうちに、妹が2曲目を入れる。
本をめくり、カシスオレンジを飲み、本をめくり、カシスオレンジを飲みと繰り返しているうちに2曲目が終わってしまった。もうごまかせなくなった。僕は意を決してリモコンを取り、GLAMOROUS SKYを入れた。
イントロがかかって、妹に「あんたこれ女の人の曲だよ」と言われた。
「あ、ああ」と言い返すのがやっとだった。「ター兄は女の人の歌もよく歌うんだよ」とはまだ死んでも言えない。
それとなく歌った。すると妹は、「ちょいちょい違うね」と批評した。
次に妹が曲を入れようとしたときに、「わたしは結構何でも歌えるから、リクエストしてよ。好きな女性アーティストは誰?」と言われた。次々にジャブを打ってくる。「…ええと、誰かなあ、ああ、木村カエラ」と答えた。そしたら「歌えない」と言われた。妹はglobeの曲を入れてしまった。僕は仕方なく自分でリルラリルハを入れて歌った。
妹はその後もminmiYUI大塚愛といったアーティストの曲を入れた。僕はプリプリとか入れた。完全にいつもカラオケのときに入れている曲が何なのかわからなくなってしまっている。
平行線を辿るうちに2時間は過ぎ、最後に「見本を見せよう」と言って妹がGLAMOROUS SKYを歌ってくれた。「SUNDAY MONDAY 稲妻TUESDAYはそんな感じで歌うのか」と妙な感想を言った。
料金を払うと、店員さんがクレヨンしんちゃんのシールをくれた。「このシール携帯に貼ればいいかなあ」とか言ったら、かなり引いていた。兄の面目丸つぶれの1日だった。