帰省1日目

田舎の群馬に帰省した。
行きの高崎線はボックス席で、目の前に座ってる女の子が内田康夫推理小説をずっと読んでいた。キオスクで買ったのだろうか。
はす向かいのおじさんが持っている使い込んだリュックには、ペガサスの絵が描いてあった。
本庄で降りて、父方のおばあちゃん家に向かう車からずっと外を眺めていた。うちの田舎の近辺は明らかにここ10年くらいで道がかなり増えていて、ルートがいろいろ変わっている。いつも通っていた道が通れなくなり、迂回する形できれいな道ができていたりする。今までの道沿いにあった本屋や文房具屋、弁当屋、友達が住んでいた家はどうなったんだろうと思いをめぐらした。
父方のおばあちゃんはいつもの通りで、ここぞとばかりに「牛乳は冷蔵庫にあるよ」「ビールは冷蔵庫にあるよ」「お菓子食べたいんなら戸棚にあるよ」と数分おきに声をかけてくれる。これがおばあちゃんだ。帰ってきたなあって気分になる。にこにこしているからうれしい。
でも本当はいつもの通りではなかったのかもしれない。おばあちゃんのずっと昔からの親友で、畳屋をやっていたおばちゃんがその数日前に亡くなっていたのだ。畳屋のおばちゃんの家には物心付く前から何度となく連れて行ってもらっていた。ヤクルトをもらって飲んだり、おじさんやお兄さんが畳を作るのを横で見せてもらったのを憶えている。おばちゃんは半年くらい前から入院していたらしい。
いつもと変わらない素振りのおばあちゃんを見て、歳を重ねるって何だろうと珍しく思ったりした。