雑記

天才 勝新太郎 (文春新書)

天才 勝新太郎 (文春新書)

勝新太郎のことをちゃんと知ったのは小学生か中学生の頃だったか。
確か、勝新が最後に監督した「座頭市」をテレビで見たのだ。
パンツ事件の前後だったと思う。
時代劇はじいさんばあさんのおかげで散々見ていたが、
座頭市の殺陣を見て「これはかっこいい」と思ったのを憶えている。
テレビの時代劇の殺陣といえば、画面の真ん中で主人公がきれいな姿勢で
立ち回るものしか見たことがなかった。
きっと主人公は強いんだろうけど、強さをあまり感じない。アクもない。
だけど勝新座頭市は明らかに違った。
座頭市はすこぶる汚い格好をしている。飯を食べるときの音がひどい。ボソボソっとしゃべる。
剣は仕込み刀だし、逆手に持って斬るし、前傾姿勢でぐるぐる回りながら斬る。
ぐるぐる回って斬って、刺して、またぐるぐる回って大勢斬る。めちゃ速いし強い。
柱や燈籠まで斬れちゃったりする。
独特の動きとリズムに見入ってしまった。カンフーのようだった。
そして何よりキャラクターに惚れた。
その衝撃から座頭市勝新が好きになり、勝新のマネをよくしていた。
影響受けるとすぐマネをしてしまう。座頭市の映画も色々見た。
話が長くなってしまったけど、創作者、監督としての勝新太郎について
書かれた本を読んだ。「偶然生まれるものが完全」という境地に行き着いた勝新の現場。
勝新の湧いてくるイメージで即興を紡いで作品にしていくという、
今も昔も考えられない作り方。
支えた勝組のスタッフもすごい。勝組は撮るのも飲むのもいつも一緒だった。
実力のある役者たちも刺激のある勝の現場に惹かれて集まってきたそうだ。
夢中になって読んでしまった。意外にも書いてる人が同い年なんだよな。