雑記

昼の11時45分。ビルの入り口近くに机を出して、弁当を並べる女の子。
この近所にランチを出す店はいくらでもあるが、
値段の相場はサラリーマンの財布にちょっときつい。
500円以下で食べられる弁当に人気が出るのもわかる。
今日も弁当屋の机の前には、列ができ始める。
「今日の日替わりは何?」
「今日は鶏の照焼弁当です」
「じゃあ、それ」
「450円です」
「先週は寒かったけど、今週になって暖かくなってよかったね」
「はい」
笑顔の女の子。
「焼肉弁当ください」
「はい、500円です」
「のり弁とスープください」
「はい、380円です」
弁当は12時過ぎには売り切れてしまう。
手際よく机を片付けて帰ろうとしたところに、若い一人の男が。
「あ、お弁当ってもう売り切れちゃいました?」
「申し訳ございません、ついさっき売り切れてしまって…」
「そっかあ」
「あ、焼肉弁当でよければまだ…」
「焼肉弁当あるんですか?」
「はい。ちょっと待っててください」
女の子はビルの前に停めた軽のワゴンまで走って行き、焼肉弁当を取ってくる。
「焼肉弁当です。これでいいですか」
「あ、もう全然いいです。焼肉弁当食べたかったから」
「よかった。500円です」
「はい500円。ていうかこの焼肉弁当って、ひょっとして自分で食べる分?」
「ああ、そうだったんですけど、別にいいんです。帰ればあります」
「何か申し訳ないなあ。ありがとう。明日はもっと早く並びます」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。それでは」
女の子は笑顔でおじぎをして、軽のワゴンの方に去っていく。
焼肉弁当を持った男は、その後ろ姿を見ている。
「いい子だな。明日は日替わりにしてみよ。メニュー知らんけど」


実際の弁当屋は40代のおじさん。昼前に来て、15分くらいで完売してしまう。
門仲は弁当を買う人が意外と多い。