クモ

ドネル=ケバブは戒名になってしまったようだ。


先生「コラーッ、ドネル、何度言ったらわかるんじゃ!」
ドネル「は、はい」
先生「枝と枝の間に巣を作るんじゃ。木の幹の途中に作る奴がおるか!」
ドネル「間違えました」
木から降りてくるドネル。下で先生や他の生徒が待っている。木の上からも生徒が見ている。
先生「いいかドネル、東京は住みづらいところなんじゃ。ここで基礎を覚えておかんと後で辛い目に遭うのは自分じゃぞ」
ドネル「は、はいー」
先生「生返事なぞするなっ!」
ドネル「はいー」
先生「ドネルッ!」



数年後。
北区のアパートの1階。一応南向きの角部屋。
天井の端っこ、しかも隅ではなく端っこのど真ん中でじっとしているドネル。
先生(回想)「こらっドネルッ!」
ドネル「またやっちゃったよ先生」
体の周りには糸がほんの少し。
巣を作ろうとしたがうまくいかなかった。
当然餌も寄り付かず、これで何日目だろう。
ドネル「線と線、面と面を糸で結ぶんだったっけ」
目が少し霞んできた。
ドネル「あきらめないで最後まで通えばよかったかな」
ドネル「おれ屋内性のヒラタグモだからさ、野外の巣作りってピンとこなくて」
体もだんだん乾いてきて、動かなくなる。
ドネル「あの頃さ、おれが先生に怒られると、いつも下で野島が心配そうな顔して見てて」
ドネル「野島のユイちゃん、今頃クモ大学でコガネグモのオスとかと遊んでるのかな」
寒くなってきた。まだ秋口なのに。
眠くなってきた。
天井から天使たちが降りてくる。鐘を鳴らしながら降りてくる。
シャンシャンシャン
ドネル「なんだよ、それ」
ドネルはにやりと笑う。
シャンシャンシャン
天使たちがドネルの右の2本目と左の3本目の足を持って舞い上がっていく。
ドネル「なんか、絵的におもしろいかもね」
シャンシャンシャン
天使は笑顔を見せる。
シャンシャンシャン
天の川を登っていくドネルと天使たち


これで明日の朝、体の向きとか変えてたらどうしよう。